小さなころから大好きな季節が来る。その匂いを夢の中で私は感じていた。
雨の匂いに、暗い空、雫に満ちた植物たち。みんなが嫌うこの季節を待ち望んでいる。
傘をさし、無限に落ちゆくその音を聞くことの好き。シックで形の整った長靴を履くことも幸せに感じる。
どうしてみんなはこの季節を嫌ってしまうのだろう。
朝早く起きたときにはもう降っていた雨をぼんやり愛でて、庭の外にでて雨を吸い込んだ芝生に裸足で足をつける。新鮮な冷たさにやっと目が覚めた感じがした。
足の汚れなんか気にもせず家の中に入ろうとする私に、父が呆れ顔でタオルを出す。
毎度毎度のことだがその顔を見るたびにこの感覚を分かってくれてないであろうことをとても残念に思う。
親子なのに。
足を拭き終え、いつものように母の作った毎日同じようで、なんだか微妙に違う、極めてオーソドックスといえるであろう朝食を食べ、部屋に戻って学校に行く準備をする。今日は雨だ、念願の雨の日。傘立てから取り出したお気に入りの傘は私同様になんだかわくわくしているようなそんな気がした。
これで目的地が学校じゃなかったらどんなによかっただろう。